はじまりのビーチへ
1975年、沖縄国際海洋博覧会が開催された年。
沖縄のとあるビーチで「マリンリゾート」の概念も静かに始まった。
その概念はやがて沖縄県内や全国へと広がり…。
沖縄最大のリゾート地、本島西海岸で。
今や沖縄最大のリゾート地といえば、本島西海岸をおいてほかにない。
これは沖縄県民だけでなく、国内で観光業に携わる者全ての共通認識といってもいいだろう。
そして、その「沖縄リゾート」の始まりは、恩納村の「ホテルムーンビー チ」であるということもまた、県内でリゾート業にかかわる者の共通認識ではないだろうか。
現在、国内の多くのリゾートホ テル内でのマリンアクティビティといえば、水上スキーやウェイクボード、バナナボートなど、水上バイクを使用したメニューは定番中の定番。
しかし、ホテルムーンビーチがオープンした1975年頃のマリンアクティビティといえば、手こぎボートや足こぎボート程度しかなかった。
そうした流れが、現在のようなスタイルに変わっていったのは、ホテルムーンビーチが日本初の水上バイクを導入した1983年のこと。
日本初のビーチリゾートでの水上バイク利用は、とても画期的な出来事だった。
それは、リゾートホテルでのマリンアクティビティでの水上バイク利用を視察するため、メーカーの担当者が何度も視察に訪れたということからも伺える。
当時は「水上バイクによる水上スキーやバナナボート」といった、「引っ張って使う」という用途が想定されていなかったため、新たな市場開拓の切り札になるとして、ムーンビーチでの実際の運用を視察したのだ。
もちろん、ムーンビーチ側もメーカーに対して惜しみなく情報提供を行った。
時には、スタッフによるデモを行うなどして、現場サイドからのフィードバックが製品開発に活かされるよう尽力した。
こうしたムーンビーチの「現場が求める」マリンアクティビティに対応するメーカーの製品開発が、後の「ビーチリゾートでのマリンレジャー」を築いていったといえるだろう。
ムーンビーチ発、全国へ。
もちろん、この新しいマリンアクティビティを視察に訪れたのは、メーカー関係者だけではない。
県内外のリゾート関係者もまた、ムーンビーチが取り入れた新たなメニューを取り入れるべく、何度もムーンビーチに通った。
ムーンビーチはそうしたリゾート関係者に対し、持てるノウハウの全てを惜しみなく提供した。
こうして、ムーンビーチ発の新たなマリンアクティビティは全国に広まっていったのだ。
「ムーンビーチ発、沖縄(マリンリゾート)のスタンダード」は、アクティビティメニューだけにとどまらない。
ホテルそのものの設計や館内の植栽に至るまで「リゾートホテルの先駆を切った故の改善点」なども含め、県内外のリゾートホテルへ全てのノウハウを提供してきた。
全国に広がるマリンリゾートの原点は、ムーンビーチにあるといっても言い過ぎではないかもしれない。

豊かな自然を活かしたネイチャーツアーもまた、ムーンビーチから全国に広まった。
無人島のナップ島(国定公園)は、植栽から海底の珊瑚まで全てムーンビーチのスタッフが管理する。
ムーンビーチのゲストだけが訪れることのできるプライベートアイランドへのツアーはとても人気の高いレジャーとして定着している。
2014年、はじまりのビーチで。
そして2014年。
ホテルムーンビーチは、館内にアート空間を誕生させた。
美術館さながらのアートギャラリーも、自然と調和したこの場所なら違和感はない。
そればかりか、まるで何十年も前からそこに存在していたかのような佇まいに驚く。
展示されている作品は、県内在住のアーティストの手によるもの。
もちろん、沖縄の伝統工芸品を主体としたアート作品だ。
すべてはここからはじまった。
「はじまりのビーチ」はこの先、どのような沖縄リゾートのスタンダードを見せてくれるのだろうか。