温帯原産のイチゴは、通常は気温の低下と、日長が短くなることで花が咲きます。
このため冬場でも気温の下がりにくい沖縄はイチゴの生産には向いていないと言われていました。
でも、最近沖縄でもイチゴ狩りとか聞くようになったのですが…。
林業から農業へ
「最初は僕も思いましたよ。沖縄でイチゴなんて採れるのって」
そう語るのは、県外から沖縄に移住してきた妻鹿さん。沖縄に移住する前は職業は林業に従事していた。
「最近は加工技術が進んでいるのでそうでもないですけど、針葉樹のない沖縄で林業はあまりイメージできなくて。一番近い業種ということで農業をやろうと決めていました。移住にあたって、いろいろな情報を集めていた時に見つけたのが宜野座村農業後継者等育成センターです」
宜野座村農業後継者等育成センターは、農業経営の後継者や新規就農者の育成を目的とした施設。次世代の地域農業を担う農業者確保に寄与する取り組みと、県外からも注目されている。 宜野座村は、県内でもいち早くイチゴの生産についてここで研修を行ってきた。
妻鹿さんは、この研修センターで2年間の研修を受け、昨年苺農家としてスタートしたばかりだ。
今の目標はとにかく収量を上げること
現在、妻鹿さんは2種類の品種を栽培している。
一つは気温が高くても果実が硬くて日持ちがよく、味も美味しいと市場の評価も高い「さちのか」。
もう一つは上品な香りと酸度の低さが特徴の比較的新しい品種である「かおりの」。
とくに「かおりの」は苺の生産者を悩ませてきた最重要病害「炭疽病」に対して抵抗性を持ち、収量も多いことから全国的に苺農家が栽培を開始するなど人気の品種となっている。
「収量が多いですし、酸味もあまりないのでイチゴ狩りに向いている品種かもしれませんね」
妻鹿さんがそう語るように、宜野座村でイチゴ狩りを楽しめるところは先述の農業後継者等育成センターを含め、概ねこの品種をイチゴ狩りの主要品種としている。
ハウスいっぱいに上品な広がり、イチゴ狩りの楽しさもアップすることは間違いないだろう。もっかの妻鹿さんの目標は、収量をあげることだ。
「やっぱり量が採れないと秀品率も上がらないですし、販売がしにくいですから。最近、青果市場への出荷も始めましたけど、やっぱりああいうところは見た目も大事。不揃いなものはあまりいい値段がつかないですから」
収量をあげ、秀品率を上げる。
そうすることで、自分の生産するイチゴが市場の評価を得られるようになっていく。
妻鹿さんの苺農家としての生活はまだ始まったばかりなのだ。
「シーズンに入ったばかりなので、まだあまり良い出来ではないですけど…」
そう言いながら妻鹿さんに頂いた「かおりの」。
取材当日は12月の中旬ということもあって、沖縄ではまだ苺は本格的なシーズンを迎えていなかった。そうはいっても、頂いた苺は名前に恥じない上品でやさしい香りを放っていた。
酸味が少なく、すっぱいものを嫌う子供でも安心して食べられるイチゴだと思った。
生産量が上がって、那覇のスーパーの店頭で見ることができる日を期待したい。
【宜野座いちご狩りについてはこちらをご覧下さい】
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